デジタル化と著作権

 デジタル化の時代を迎え,私たちは,次に示す2つの観点から,著作権に対しての理解が大切になっています。 一つは,デジタル化された他者の創作物を取り扱う機会が増加し,以前より,著作権に対して配慮する必要性が高くなりました。言語,音楽,美術など多くの著作物はデジタル化され,CDやDVDなどの記録媒体で大量に複製されて商品化されています。また,インターネットを通じて入手することも可能です。
 その結果,デジタル化された著作物を入手し,コンピュータによって編集,加工,複製することが簡単にできるようになり,うっかりと他人の著作物を複製して配布するなどして,著作権を侵害してしまう可能性が激増しました。
 もう一つは,インターネットによる情報発信の機会が増加し,自己の創造物に対する知的財産権の理解が必要となってきたことです。インターネットの普及により,個人での情報発信がたいへん簡単になりました。たとえば,自分で創作した詩や小説,画像,音楽などの著作物をWebページで公開すると,世界中の人たちからその著作物を見たり聴いたりしてもらうことができます。しかし一方では,見知らぬ人に簡単にコピーされてしまい,あなたの著作物が知らない間に売買されるということも考えられるのです。

著作物

 デジタル化された著作物を日常の生活で取り扱う機会が急速に増えています。デジタル化が進んだ情報社会では,著作権を侵害する,あるいは侵害される可能性が高まり,出版や音楽業界など著作物を扱う企業だけでなく,私たち一人ひとりが著作物と著作権に対する理解を深める必要が出てきたのです*1。
 著作権で保護される著作物の種類やその具体例および取り扱いの注意について,表2-2にまとめています(著作権法10~12条)。ただし,著作権は「表現されたもの」を保護する権利なので,頭の中だけで考えたアイデアはそもそも著作物とはされません。
 また,お知らせ記事など「誰が」「どこで」「いつ」「なにをしたのか」といった事実の伝達にすぎない時事の報道も創作性がないので著作物とされません(同法10条2項)。法令,判決,その他の行政文書などは著作物ですが著作権は発生しません(同法13条)。

表2-2 著作物の種類と具体例
著作物の種類 具体例 デジタル化された情報との関連
言語 小説,脚本,論文,講演,詩歌などのほかに,創作性のある手紙なども含む 電子メール,Webページなど,インターネット上で公開,あるいはインターネットを経由する文書は著作物である。
音楽 作曲,作詞 デジタル化された創作性のある音楽(歌謡,BGM,旋律など)は著作物である。
舞踏 舞台での演技者の振り付け CGや3DCG(3次元CG)で作成した振り付けは著作物である。
美術 絵画,彫刻,版画,漫画,書,挿し絵 CG,アニメーション,Webページのデザインは著作物である。
建築 建築物自体 建物の設計図は著作物である。ただし,建物の写真は,許諾なしにWebページに載せてもよい。
地図・図形 地図,学術的な図表,模型,設計図,地球儀 Webページ上に公開されている地図,図・表,イメージマップは著作物である。
映画 上映映画,テレビ番組,ビデオ作品 Webページ上の動画,ストリーミング配信映像は著作物である。
写真 創作性のある写真,グラビア写真 創作性のあるデジタル写真,Webページに掲載されている写真も著作物である。
プログラム コンピュータプログラム ソースおよびオブジェクトプログラムは著作物である。プログラム言語自体と,プロトコルやインタフェイスの規格は著作物ではない。
二次的著作物 著作物の翻訳,編曲,彫刻を絵画にするなどの変形,脚色,映画化,現代語訳などの翻案 コンピュータで文章,画像,映像など他者の著作物を取り込み,一部を改変,あるいは統合した創作物は二次的著作物。素材にした著作物の利用に関しては,原著作者からの許諾が必要である。ただし,引用の範囲では許される。
編集著作物 百科事典,辞書,詩集,判例集,新聞,雑誌など デジタル化された百科事典,辞書,雑誌のバックナンバーリストなども編集著作物である。
データベース 論文,数値,図形など検索が可能なもの 効率よく検索できるように工夫して素材を配列したデータベースは著作物である。検索で得た情報が著作物の場合,利用するには許諾が必要である。

著作権

 表2-2に示す著作物は,表2-3に示す財産権としての狭い意味での著作権によって保護されます(同法21〜28条)。多くの場合,著作物を創った著作者が,著作権を専有する著作権者ですが,著作者が著作権を譲渡した場合,著作権者が死亡し相続がなされた場合などは,著作者以外の人が著作権者になることがあります。なお,著作物を保護する期間は,著作者の死亡した翌年から50年間と定められています(同法51〜58条)。ただし映画の著作物においては70年です(同法54条)。その後は,文化の発展のために広く社会全体に開放されます。

表2-3 著作権の種類と内容
複製権 著作物を複製する権利である。複製には,印刷,コピー,写真撮影,録音・録画,記録メディアへのコピー,模写や手書きのメモも複製にあたる。
上演権・演奏権 公衆を前に上演,または演奏する権利である。生演奏だけでなく,コンピュータ制御での演奏,録音・録画物の再生も含まれる。
上映権 著作物を公に上映する権利である。映画の上映だけでなく,カラオケの映像やゲーム,プレゼンの映像を再生することも上映権に含まれる。
公衆送信権(送信可能化を含む) 著作物を公衆に発信する権利である。テレビ・ラジオの放送,CATV等の有線放送,インターネットを通じての送信等の権利である。著作物をサーバに保存して,公衆からのアクセスを可能にする送信可能化も含まれる。
口述権 言語の著作物を公衆に口述する権利である。テープやCDに録音された小説や童話の朗読,英語のリスニング教材の再生も含まれる。
頒布権 映画の複製物を譲渡あるいは貸与する権利である。ただし,映画のビデオテープやDVDは通常転売が許諾されている(ただし,ビデオゲームは映画とされるが,頒布権は認められていない。最高裁1小2002. 4. 25判決)。
譲渡権 原作品または複製物(映画を除く)を公衆に提供(たとえば販売)する権利である。一度公衆に譲渡された著作物(中古品)には,著作権者の譲渡権は及ばない。
貸与権 著作物(映画を除く)の複製物を公衆に貸与する権利である。たとえば,レコード(CD)レンタル等の権利がこれにあたる。
翻訳権・翻案権等 著作物に翻訳,編曲,変形,脚色,映画化,その他翻案などを行い,二次的著作物を作成する権利である。なお,二次的著作物を利用するには,二次的著作物と原著作物の両方の著作権者の許諾が必要である。
展示権 絵画や彫刻などの美術の著作物や写真の著作物を展示する権利である。

著作者人格権

 著作権とともに,著作者には著作者人格権が与えられます。表2-4に示すように,著作者人格権は,公表権,氏名表示権,同一性保持権から構成されています(同法18〜20条)。この著作者人格権は,著作者の人格的(精神的)な利益を保護するための権利で,譲渡や相続することはできず(一身専属権),著作物を創作した原著作者のみに与えられる権利です。著作権と同様に法令,判決などには著作者人格権は発生しません。

表2-4 著作者人格権の種類と内容
公表権 未公開の著作物を公表するか否かを決定する権利
氏名表示権 実名あるいは変名を著作物に表示するか否かを決定する権利
同一性保持権 著作物の内容および題号を無断で変更,削除されない権利

著作権に関連する権利

 その他,著作権ではありませんが,著作権に関連する権利として,表2-5のような権利があります。
 なお,アイドルや有名人の写真を一部変更したアイコラなどは,写真の著作権だけではなく,無断で使用された人の肖像権をも侵害することになります。
 また,商品やサービスなどを実際のものより優れたものとして表現する行為は,不正競争防止法に触れる行為となります。

表2-5 著作権に関連する権利の種類と内容
キャラクタ権 キャラクタの経済的価値を保護する権利
商品化権 キャラクタなどを商品化する権利